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とっておきのティーカップデビル、今日はゴキゲン。

2021-06-27

とっておきのティーカップデビルが今日はゴキゲンだった。


カップの縁に肘をかけながらも小綺麗なフェルトハットをとり一礼したかと思いきや、それっきり薄気味悪くニタニタ笑っているだけ。


午後の大切なティータイムを邪魔されても不愉快なだけだと無視を決め込み、とぽとぽと紅茶をカップに注ぎ始めると、


「おっ、今日はMariage FreresのMarco Poloかい。久しぶりだな。」


小五月蝿いな…と思いながらも、先刻自身と交わした約束どおりスルーし、まろやかな甘味を含んだ優しい花や果物の香りを楽しむことにした。


「知ってたか?コンブチャって、昆布入ってないんだぜ。」


と、ネットで仕入れたであろう割とどうでもいいタイプの豆知識をなんの意図あってかわからないが披露してきた。


(いや、そもそもコンブチャのんだことないし…)


なんて思いながらも少しへーっと思ってしまった。元から自分の知識にもかかわらず。


華やかな香りが晴れ渡る青空と、別にみたこともないおぼろげな紅茶の茶畑を想起させていたが、どうでもいいコンブチャの小話のおかげで印象派的な白く淡いイメージが、小学生が無秩序に溶かした絵の具で描いたような、薄く濁った水彩画のようになってしまった。

そのくすんだ曖昧な青と緑のコントラストが3週間ほど前に通りで見かけた、コインパーキングの縁石でうずくまるようにして絶命していたメジロの姿をチラつかせた。

砂っぽい縁石と錆びたスロープの間にいたものだから、おおよそ車にでも轢かれたのだろう。




角砂糖を溶かすつもりでいたが、なんとなくやめてしまった。




とっておきのティーカップデビルが今日はゴキゲンだった。




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